「電凸」 それは、気に入らない人のプライバシーを暴いたり糾弾したりする行為

毎日新聞
発信者の責任　花谷寿人（社会部）

　

裁判の傍聴がちょっとしたブームらしい。かつてはよほど注目を集めた事件以外、被告の親族や知人、新聞記者しか見当たらなかった。最近は法廷で「あなたもマニアですか」と声をかけられる記者もいる。

　生身の人間ドラマは好奇心を刺激する。裁判員制度のスタートも控え、裁判への関心が高まることに異論はない。

　だが、インターネット上に載せられている傍聴記を見ると、中には「書きすぎ」と感じるものもある。刑の軽い事件でも、被告や関係者のプライバシーに過剰に踏み込んだ内容が含まれているからだ。

　裁判は公開が原則。国民の知る権利は憲法で保障されている。既存メディアにすべて任せるべきだなどと言うつもりはない。誰もが情報の受け手としてだけでなく、発信者になれる。ネット社会がそれを可能にし、情報の多様性をもたらしたことは事実だ。

　それでも発信には責任が伴うと考える。例えば「電凸」（電話による突撃）と呼ばれる行為。ネットに気に入らない書き込みがあると本人のプライバシーを暴き、電話番号を探し当てて寄ってたかって電話をかける。さらにそのやりとりまでネットに載せて糾弾する。発信する側は「匿名」という安全地帯に身を置く。「顔が見えない相手から苦しめられた」という人は多い。

　毎日新聞の世論調査でネットの情報発信に何らかの規制が必要と答えたのは７５％。一方、別のアンケートでは、匿名の書き込みを実名にすべきだとの回答は２８％にとどまる。折り合いをどうつけるか、知恵が試される。

なんか、「電凸」の内容がおかしくね？
ブログで犯罪の告白とかＤＱＮ行為を自慢して祭られた人に対する「スネーク」の行為と混同してる気がする。
まあ、電話かけたり現地に実際に行ったりする行為が広い意味での「突撃」と言えば言えるのかもしれないけど、ハングル板発祥の本来の意図や現在でも使われている意味合いと違う。基本的にはマスコミや政党・政治家・省庁、ＮＧＯ、宗教団体、民族団体等ある程度以上の「力」を持った団体が対象であり、またプライバシーを暴くことは目的ではない。


一方で、かなり実態を正確に伝えていると思われるのがこれ↓

読売新聞
モニ太のデジタル辞典　電凸（でんとつ）

　各種団体、官庁、企業の活動やマスコミの報道に対する疑問を持つ個人が回答を求め、要望を伝えるために、電話で直接突撃インタビューをするという意味で使われている言葉ですワン。インタビューといいますか、たいていの電凸は苦言を呈するために行われます。

　巨大匿名掲示板の２ちゃんねる（現在は完全に匿名というわけではありません）から生まれたネットスラングで、「凸」の字を使わずに「電突」と書くこともあります。同様でメールを使うときには「メル凸」、イベント現場に出向いたり、相手のブログのコメント欄に意見を書き込んだりすることを「凸る（とつる）」「凸する（とつする）」などと表現することもあります。

　この電凸、ネット環境の普及で団体への連絡先がすぐわかるようになったので、気軽に行う人が増えたという声があります。それに加えて最近ではブログがブームになり、レポート発表の場が増えたことも人々を電凸へ向かわせているところがあるように思います。

　たまに混同する人がいますが、電凸といたずら電話、中傷電話はまったく別物です。電凸はきちんと話をするためにかけるもので、相手が出たとたんに受話器を置くようなものは単なるいたずら電話ですワン。

　電凸相手は上記の団体だけでなく、本当に小さい市民団体だったりすることもあるので規模の大小は関係ないようです。中には架空請求業者に電凸を試みる人もいて驚きますが、トラブルに巻き込まれないとも限りませんので安易にマネしないほうがいいと思いますワン。

ところで、オーマイニュース初期のゴタゴタで有名な佐々木俊尚氏のブログに興味深いことが書いてあった。

佐々木俊尚　ジャーナリストの視点
毎日新聞連載「ネット君臨」で考える取材の可視化問題
（前略）
新聞社も、ようやくそのことに気づきつつある。「ネット君臨」取材班の担当デスクである花谷寿人デスクは、毎日新聞の「発信箱」というコーナーで、「ネット取材考」というコラムを昨年末に書いた。彼はこう書いている。
　
ところがいきなり、ネット社会の怖さを感じることになる。相手が取材された内容を、直後にブログの日記やネットの掲示板に書き込む。新聞記者のかつての取材は１対１の関係だった。それが大きく変わり、記者個人の名前や取材の仕方が不特定多数の人々にさらされる。メディアもそういう時代を迎えたことを思い知らされた。記者は名刺を出すことさえ、ためらうこともある。

　取材対象とのこの関係性を、「怖さ」と感じるのかどうか。「ためらう」と思ってしまうのかどうか。そのハードルをどう乗り越えられるかどうかに、新聞記者がネット時代を生き残れるかどうかがかかっているように思う。「怖い」「ためらってしまう」と感じてしまうのはしかたないことだと思うのだが、そこで踏みとどまってしまって、「怖いネットはやはり危険だ」とネガティブ思考に転じてしまったら、その先の未来は存在しない。花谷氏は実は私の新聞社時代の先輩（私も毎日新聞社会部出身だ）で、面識がある。この件について、一度ゆっくり話し合ってみたいと思っている。
（後略）

ここで、冒頭に掲げたコラムを執筆した花谷氏が、「ネット君臨」取材班の担当デスクだということがわかった。ということは、彼の言う「電凸」は、恐らくさくらちゃん募金の一連の騒動を指してるものと思われる。

んー。
さくらちゃんを巡る騒動の是非はさておき、花谷氏はあまりネット社会に対する知識が無いように感じる。それは、「電凸」の内容を正確に理解せずに、思い込みで書いてることからも分かる。しかも、始めからネットに対して敵対心剥き出しで、結論ありき。こういう人がネットを語るのはどうなんだろうか。
結論ありきで取材しそれを記事にするという手法は、マスコミ内部では当たり前の手法なのかもしれないけど、その手法をそのままネットに適用すれば、激しい拒否反応が生じる。いや、対象がネット以外でも拒否反応は生じていたのだろうけど、それが顕在化することは無かった。というよりも、握りつぶされていたという方が正確か。


んで、冒頭の花谷氏のコラムから一部を再度掲載。

例えば「電凸」（電話による突撃）と呼ばれる行為。ネットに気に入らない書き込みがあると本人のプライバシーを暴き、電話番号を探し当てて寄ってたかって電話をかける。さらにそのやりとりまでネットに載せて糾弾する。発信する側は「匿名」という安全地帯に身を置く。「顔が見えない相手から苦しめられた」という人は多い。

これで分かった。
「ネット君臨」の記事の意図が分かった。

「がんだるふさんよー。さくらちゃんがやられている嫌がらせをそのままアンタにやってやるよ。毎日新聞という大マスコミ様がアンタのプライバシーを暴いて、糾弾してやるよ。え、何？他人のプライバシーを暴いておいて、自分は本名名乗れないの？それって卑怯だと思うんですけどー。匿名で（以下略）」

こんな感じか。

下らん。
しかも、手法が稚拙。

そういう「俺たちマスコミが裁いてやるよ」という「正義感」がダメだっつーの。あと、お涙頂戴で無理矢理脚色したり、誰かをスケープゴートにして叩いたり、そういうのもダメ。マスコミによる価値観の押し付けには、ネットユーザーは非常に敏感になっている。マスコミは価値判断をせずに、情報の受け手に任せるべき。そういう時代なの。


「ザラキで一瞬で殺されるなんて理不尽だ！！」「なんだこのダメージ床は！！」って文句言ってもしょうがない。マホト－ンで呪文を封じ込めるなり、賢者の石を持ってベホマでガンガン回復するしかない。

「いや、俺は今まで薬草しか使ってこなかったし、マホトーンなんて使ったこともない。だからこれまで通りでやる」

ああ、そうですか。しかし、ここはそういう人が来る場所じゃありませんよ。そういう人は最初の町の周辺で、スライムとかドラキーとかをやっつけていればいいんじゃないですか。スライムにザラキを唱えて「お前ら、こんな理不尽な呪文で殺されて何も感じないのか！？」とご高説を垂れて、その実況をブログ（日記風サイト）でやってくれ。
誰も読まないから。
俺は読むけど。


というわけで、一連のさくらちゃん募金を巡る騒動と毎日新聞の「ネット君臨」特集は、環境変化に適応できずにイラつくマスコミの醜悪な姿が晒されただけなのでした。


なお、引用した佐々木氏の記事は、省略した部分も非常に面白く納得できる内容なので、一読することをお勧めします。