俺は右翼だけど、最近の右傾化はよくないと思うよ

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愛国者・鈴木邦男さんの包容力　「左右ではなく、話し合えるか、合えないか」
東京・中野『教育に自由を！』集会に駆けつけた
安住るり 2007-02-14 09:04

　

鈴木邦男さんに会えた。イメージ通りの優しそうな人だった。３歳上の６３歳のはずだが、とても若々しい。

　２月１０日夜、東京・中野のZEROホールで『教育に自由を！』という集会が開かれた。目玉の対談が、鈴木邦男さんと小森陽一さんだというので駆けつけた。

　鈴木邦男さんがオーマイニュースに連載していたコラムを私は愛読していたが、昨年末に打ち切りになった。それがとても残念だったということを伝えたい。また、３８年前に三島由紀夫さんに３度会って言葉を交わしていることも伝えたい。オーマイニュースの「市民記者手帳」をお守りのように持って、会場の楽屋にお邪魔した。

　「コラムを書いておられましたよね、愛読していました」
　「クビになっちゃった」
　「写真を撮らせていただけますか」
　「一緒に撮りましょうよ」

　こんな気さくで優しい「右翼」の鈴木さんと、腕を組みたい誘惑を抑えながら、オーマイニュースの記者手帳の表紙にサインしていただいた。

　この「集会」は、東京都教育委員会による学校現場（都立高校など）への「日の丸・君が代」の強制と、それに抵抗した教師への行政処分に抗議するものだ。５０くらいの団体が協賛していて、会場は熱気に溢れていた。参加者は５５０人だったと報告があった。

　行政からの管理が厳しくなることで、教育現場にどんなことが起こっているのか。元校長、保護者、高校生自身からの告発が続いた。憲法に保障された「思想・良心の自由」「基本的人権」が影響を受け、教育の場から活力が失われ、最も大切な信頼関係、協働関係が破壊されていると彼らはいう。

　「国旗・国歌法」の制度主旨は「国旗、国歌は、国民に対し強制するのではなく、自然のうちに国民の間に定着させる」というものである。東京地裁は２００６年９月２１日、東京都教育委員会の「通達」と校長による教師への「職務命令」はこの制度主旨に違反している、との判決を下した。これに応じて、都に対し管理強化をやめるよう、声を上げていこうというのが、この集会の目的だ。

　最後にお目当ての「対談」が始まった。小森陽一さんが漫談調で楽しそうに、「僕の左に鈴木さんが座っていますが、皆さんから見ると、右が鈴木さんで、左が私ということになりますかね」と笑わせる。

　鈴木邦男さんは「世の中、左か右かではなく、話し合える人か、話し合えない人か、に分かれます」と言う。

　（以下は鈴木さんの発言要旨）

　ちかごろ急に「愛国心」とかが流行りだして、ぽっと出のにわか右翼などが増えて、大声で自分は「愛国者だ」という。また、卒業式・入学式に日の丸を掲げろ、とか、君が代を生徒にも起立して大きい声で歌わせろ、とか、それをしない教師は処分するとか、おかしなことが東京都などで起きている。僕は日の丸・君が代が大好きだから、強制で嫌々歌われるのでは「君が代」がかわいそうだと思う。

　『愛国者は信用できるか』（講談社新書）という本を書いた。これは自己批判でもある。何千回も「日の丸」を掲げ、「君が代」を歌ったが、形や知識は無意味だ。「愛国心」は教えられるものではない。日本一の愛国者の僕だってそれは無理だ。なぜなら、「愛」とは「心」の問題で、好き嫌いの「主観」だから。「愛国心検定試験」なんて可能か？　どんな基準があるのか、文部科学省は示せるのか？

　改正教育基本法で「国を愛する態度を養う」とか言っているが、「態度」というのは「行動で示せ」ということだろう。どんな行動をすれば「国を愛している」ことになるのか？日の丸にお辞儀をし、大声で君が代を歌うことか？愛国者像は時代によって変わる。

　江戸時代までは「クニ」といえば「藩」のことだった。忠義の対象は「天皇」ではなかった。天皇には政治力も軍事力もなかった。日本の長い歴史の中で、ほとんどの時代がそうだった。それが「日本の伝統」と言える。ところが明治時代から「国体」の考え方が変わった。天皇が軍事統帥権を持つのが正しい国体だとされた。これは「日本の伝統」に反していないか。

　「国家」とは近代になってつくられた概念であり、「愛国心」とは人工的観念である。人間が自然に持てるのは「愛郷心」だ。観念的な「愛国心」を国民に強制する目的は何か。

　僕はながいこと「右翼」をやっていたが、「おれは国のために死ねる！」と大声で言う奴が一番の「愛国者」だということになる。くだらない。生きている限りは、それは証明されないのだから。

　まちがった愛国心ゆえに「人殺し」をしたり「放火」をしたり、考えの違う人を全否定したりする。「愛国心」とはアブナイものだ。「売国」とか「非国民」とかいうことばは禁止用語にすべきだ。

　自分の国だけを褒めるのが「愛国」か？「愛国」と「憂国」は違う。ほんとうに国のためを思えば、「反日」になることもある。現状変革の意欲は、時の権力に逆らうこともある。

　自民党の改憲案はアメリカの言いなりだ。集会の自由などがどんどん制限される方向に向かっている。自由のない「自主憲法」よりは、自由のある「占領憲法」のほうがマシだ。

　（以上、鈴木さんの発言要旨）

　１月２５日付の朝日新聞に掲載された世論調査（全国の有権者３０００人への面接調査、昨年１２月実施）によると、「日本に生まれてよかった」という人は９４％。筆者もそう思う一人だ。「愛国心がある」が７８％。戦前の日本の侵略や植民地支配については、「反省する必要がある」と考える人が８５％。「愛国心がある」人のなかでみると、「反省する必要がある」と考える人は８８％に高まる。この調査によれば「愛国心」と「戦前への反省」は、全く矛盾していない。

　「戦後教育の偏向のために愛国心が薄れている」という主張はステレオタイプである。「右翼」は愛国的で、「左翼」は自虐的というのもフィクションだ。イデオロギー対立は１９８０年代末に終わった。メディア上の議論は現実に追いついていけているのか、自己批判が必要なようだ。

　「愛国心は大声で叫ぶものではない。心の中にあればいい」。そう語る鈴木邦男さんの穏やかな笑顔が魅力的だった。

　【鈴木邦男氏の参考サイト】
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鈴木邦男とか雨宮処凛とかの「私は右翼だけど、最近のネットウヨクはよくないと思う」的主張は飽きた。近年言われている「右傾化」ってのは、彼らの経験してきたものと全然違う。人選ミス。
伊藤正則にポリス再結成についてのコメントを求めるようなもんだ。